書くべきこと

開かれた場所に書くべきこととは何か。仮に今書くべきことでないことを書いて公開しても、どうせ誰も読んでいないのだから、後に削除すればいい話で特に考えるべきことはないのかもしれない。しかし、仮に誰も読んでいないとしても、書くのを躊躇われるものがいくつかあって、その大きなものの一つに他人の話がある。他人の話をしないのは、彼らの像を私が勝手に作りたくないからなのだが、他人の話をしないままでいると、孤独の像を作られてしまいそれを背負うことになりそうで、それも避けたい。ずっと遠い未来の話をしている。私の像が作られて困るのは、私が文芸において何らかの成功を果たしたときであって、それまでは喜ぶべきことも嫌悪すべきことも何もない。自分の譲れない信念のうちの一つに誠実であることを掲げていたが、日々を振り返って、その信念が簡単に打ち砕かれていることを発見し、さらにそれに気づくことなく、潔白な信念の旗を屋上にはためかせていると妄信している自分がいて、暗鬱な気持ちになる。自分のことを他人に話さない人間はかっこいいと思うが、私は自分の話をしなければ生きていくことができず、私が話すことができるのは全て自分の話だった。最近は、基礎がなっていないと反省し、一から歴史を学ぼうと思って、古代文明について書かれた新書を読んでいる。最近、岩波ジュニア新書のメソポタミア文明について書かれた本を読み終わった。周りはすでに大学を卒業して社会人になっているのに、私は岩波ジュニア新書を読んでいる。私が相対的にできそうなのは狭義の古典的な知であるのに、それを磨こうとすらしなかった。失った時間を数えて同じ文章を書き綴る。だから、過去は捨てて振り返らないようにしているのだけど、いざこうして何か文章を書こうと思うと、身につけたものがないから、ひたすら過去と内面の記述に偏る。他人のことを書かないのは、上記の理由も本当なのだけど、書けないと言った方がより真実に近い。吐きたいことがある。臓物の内壁にびっしりとこびりついて離れないものがある。饒舌な高貴人の自己像は全て妄想だった。最近は特にたくさん本を読んでいるし、勉強もしているはずなのに、書きたいことはほとんどなくて、詩もしばらく書いていない。したいことがない。全人生をかけてしたいことなんて何もない。しかし、ただ死にたくないという思いは強く、何かしらを手に入れている人間はSNSの至る所に見受けられる。全人生どころか、今日したいことだって何もない。全ての義務から離れたいぐらいしか、やりたいことがない。そんな独りよがりなことしか考えない自分が悲しいし、今まで与えられてきたものを返そうとも思わないのはなぜなのだろうか。文芸。今、文芸に触れるペースは一週間に一冊程度。こんなペースで何かを成し遂げられるなんて全く思えない。今まで書けた詩も、今は書けなくなった。今考えていることはペンネームをどうするか。なんてどうでもいいことなんだ! 義務はたくさん課せられていて、それを果たそうとすればこの人生を生きることができるのに、これは私の生にはならない、なってほしくないと却下している。明日は土日が始まるが、どちらもバイトが入っているから一日休みとはならなくて、平日も休もうと思えば休めるのだけど、やるべきことが終わっていないから休めない。もっと要領よく生きることはできたはずだった。何に苦しんでいるのかもわからないくらいに馬鹿だから、色々学ばなければいけないのに。全てが本に書かれているわけでは全くなくて、本に書かれていることを知るには、現実で体験しなければならない。つまり、身体によって更新しなければいけないから、最近はなるべく外に出ようとしている。内に閉じこもっているよりも、外に出かけた方が生を実感する。家にあるゲーミングチェアは捨てようと思う。家にいても何にもならない。寝たいのに寝たいし、音楽を聴きたいのにTwitterを漁ってしまう。面白いものが見たいのにサムネとコメント欄ばかり眺めるし、私の書く全ての文章が嫌いだ。自己嫌悪は気持ちがいい。それ以上の快楽を私は知らない。

行を変えてみる。何も出てこない。私が本を開くのは、何も知らない自分が恥ずかしいからで、理解できない知らないことへの劣等感で、何もしなかった時間を取り戻したいからで、これが私の生なのだと信じたいからだった。読書が楽しいという人間のことが信じられないし、もしかすると、彼らも言わないだけで私と同じような感情を抱えていて、それで本を読んでいるのかもしれない。そうでないことを願う。他者に対して抱いた怒りをどうすればいいのかわからない。馬鹿が怒りを発散しようとしたところでうまくいくわけがなくて、誰かをいたずらに傷つけるか、見せ物にされるかしかないのだから、なるべく激情は書かないことにしている。未来の自分にだって笑われたくない。人の呼吸がうるさい。外は暑い。

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